原ヽ居(げんてんきょ)は、長野県飯島町にある古い土蔵を改修した一棟貸し宿です。ここは元々、私たちが縁もゆかりもないこの地へ移住してきた際に、私たちの住まいとして改修に着手したものでしたが、紆余曲折を経て、これからの時代の暮らし方を探求する実験の場として、モデルルームのような位置付けの宿泊施設として運営することとなりました。
改修にあたっては、朱組が設計を実施し、地元の職人の方々に施工して頂いたものですが、私たち自身の手でつくれる部分はつくり、自ら暮らしをつくっていく力を取り戻しながら、現代の生活様式の中で無理なく土蔵を再利用する可能性を探ったプロジェクトです。身の丈にあった小さな規模・予算のなかで、ご縁ある方々の助けを借りながら、一歩一歩つくりあげていきました。
雄大なアルプスに囲まれたこの土地に長年建ち続けてきた歴史ある建物に敬意をはらい、蔵の内部はできる限り手を加えずに昔の趣を残しつつ、蔵の前面部分にキッチン、トイレ、お風呂を集約、新しい時代の生活様式と歴史ある蔵の佇まいが、コントラストを持ちながらも、調和するように計画しました。













追記
原ヽ居では『暮らしに「ヽ」を。』をコンセプトに、自分たちの暮らしという物語の途中に「ヽ」を打つように日々の時間を静かに見つめ、自分たちなりの心地よい選択を積み重ねていくことで生まれてくる「安心感」を共有できる空間づくりを目指しています。そのような意味において、原ヽ居は私たちの暮らしの延長線上にある生業であり、表現手段でもあります。
コンセプトの背景には、かつての私たちの生活がありました。東京で働いていた頃は毎日が忙しく、違和感を抱えながらも目の前のことで精一杯でした。私たちの社会はどこへ向かっているのか、本当の豊かさや幸せとは何か、自分の心は本当は何を求めているのか、といった根本的な問いは日々の忙しさの中へ流れていきました。その代わりに、心の奥底では大きな社会の仕組みに囲まれ、現状を失う不安を常に抱えていたように思います。
ほとんど計画なしに当時務めていた会社を辞め、始めた暮らしの再建の旅ですが、そのような当時の自分に、今まで得られてきたものを手放しても、自分にとって自然体の選択をもう一度ひとつひとつ選び直すことで、自然と等身大で安心な暮らしが育まれていくから大丈夫、とエールを送るようなつもりで原ヽ居を運営しています。
現代的で魅力的な暮らしは経済的・社会的に豊かでないと実現できないという思い込みを外して、いつどこからでも、安心で豊かな暮らしを自分たちの手に取り戻せると信じ直すプロセスそのものが、私たちにとっての実験であり、こころの原点へ還る旅であり、この地へ訪れる縁ある方々と分かち合いたい風景です。
Contact
建築設計、各種デザインや写真撮影に関するお問い合わせはこちらから。建築設計だけでなく、名刺などの単体のデザインや写真撮影のみのご依頼もご相談可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
Privacy Policy
©︎ Akagumi